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文章構成のPREP法は、プロットやSSに活かせると思う。—前置きが長すぎたり、設定を太らせすぎて詰むタイプのひとには効く—

■今晩、起こった災難をありのまま


いまほど風呂を上がりました。本を読み進めていたら、すっかり長風呂です。

頭にタオルをかぶり、サーキュレーターのまえで、肌から水気が消えるのをぼーっと待っていました。

しばらく呆けているとぶぅーんと羽虫の飛ぶ音が、脳天のあたりから聞こえ、

ハエにしては大きな羽音に、なにやつかと天井を見上げました。

春のパン祭りでもらえそうな、真っ白くて平らな電球に、薬指の爪くらいの影。

よく見ると、その影には何本かの細い足があり、ほのかに緑ー……カメムシです。

わたしは気配を殺し、奴をギギッと睨みました。動くなよ。

必ず生きて部屋から出さねばならぬ。今夜の睡眠は明日の安全。いわばこれは命にかかわるミッションなのです。

冷蔵庫の横に立てかけていたクイックルワイパーを掴むと、銃の手入れをするゴルゴの面持ちで、

ウェットシートを取り付ける平らな面へ、ガムテープの粘着面が外を向くように貼り付けました。


とまあ、ここまで語ると長ったらしくはあるのですが、今日は文章の構成の話をすこししようと思います。



■暴君ごっこのビジネスマン、わりと多くない?


弊社のお得意先の社長、Aさんは、ゼロイチの会話を好みます。

『俺が訊いたら、ハイかイイエだ』という発言を現実世界で耳にする日が来ようとは。

北斗の拳リアタイ年齢、さすがか? とまで思いましたが、北斗の拳に罪はない。わたしはレイの女です。


ちなみにこれ、ハイともイイエとも判断がつかない状態にある案件でも、こうです。

説明抜きの回答なので、『ハイ』と端的に答えた場合に、関連してくる事柄や次の質問は当然Aさんの知っている情報をもとに発生します。

だから会話の延長で、説明が必要になるのですが、さきにAさんが想像した解釈をすべて聞くまで、説明を挟んではいけません。

『俺が話しているときは黙って聞け』です。

理不尽ですがまあ仕方ない。お賃金お賃金。



こんな辺境にお越しの方も、暴君ごっこのお好きなビジネスマンのお相手をされたことがおありかと思います。

お互い苦労が絶えませんね!そんなやつには言ってやりたい。30秒聞け。あなたの解釈を5分聞かずに、結論に達するはずだ。



■プレップ法ってどんなものか、さっくり説明します。


そんなわけで、なんちゃって暴君たちよ、ぜひ『プレップ法』というやつをお勉強してくださらぬか。

(できればメールで済ませたいというのが本音)


ビジネスのレポート等でよく使われる文章作成法ですけど、それに限定されず、たとえば小説にも活かせると考えています。

さきほどから、カタカナで表記していますが、頭字語で『PREP法』と書きます。

①Point(結論)

②Reason(理由)

③Example(例・経緯)

④Point(結論)



Aさんの場合は、プレップ法失敗タイプです。

①のポイントを欠損状態で受け取り、迷走したあとに、②理由と③経緯・例を引き出し、加味し、①の結論とは異なる④結論に着地します。

のどぼとけの辺りにじんましんが出そうなくらい嫌すぎて。のどぼとけないんですけど。


■せっかくなのでカメムシのことをプレップ法で説明します。


①~④の番号を入れずに、つらつらと書くので、なんとなく認識してもらえればと思います。


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いまほどカメムシを捕獲しました。侵入しているのを風呂上りに発見し、直ちに当該照明を落とし、PCから遠い電球へ誘導。室内を確認しましたが侵入経路は不明です。

クイックルワイパーとガムテープを使い、生け捕りに成功したのち、悪臭を発するまえに、クイックルワイパーごと玄関から出しました。

なので明日の朝、玄関を開けたら、カメムシのくっついたクイックルワイパーがあります。明日のわたし、ご注意ください。

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まじで明日のわたし、あれを片付けるの頼んじゃってごめんね。忘れないでね。

プレップ法に準じた文章を、小説の観点からみると、とってもつまらない、薄味の文章だと思いませんか。

無駄がなくて、サクサクしてる感じ。着地してから、飛んで、ほんの少し前に着地するイメージです。



■SSやプロットに活かせると思った根拠 

—結果の開示からはじまるので、ある意味伏線ストッパーになる-


SSというのは、取り立てて文章法なんて気にせず書いちゃっていいと思うんです。

でもまあ、設定や伏線を風呂敷を広げすぎて、わやわやになってしまい、回収するのがつらくなった結果、

書きかけのものを捨ててしまう方、折にいらっしゃるのではないでしょうか?


常々、小説の話をするときに、親しい人に伝えていることなんですが、

小説は小さい話のくりかえしで、長く、厚みのあるものに育ちます。

タイルやレンガをイメージしてください。ひとつひとつでは用を足さないけれど、

組み合わせることで、機能します。


SSがシリーズ化すると、いわば小説の四コマ連載になります。

10話、20話とつづけば、あれよあれよの1万字!

ア~コレ、同人誌にしてイベント出ちゃえるかも! なんてことも、ありえます。



で、なんでSSにプレップ法かと申しますと、『お話が広がりすぎるのを防いでくれる』からです。

だってもう、結論を開示してますからね!

最初に踏んだ場所から、大きく飛ぶのを制限するわけです。


そうして単話完結が書けるようになると、『完結させるノウハウ』が育ちます。

回収できる範囲で物語を広げていく、とも言い換えられそうですね。



終わらせることで、『終わらせた!書ききった!』という自信も育ちます。

自分をすきになれると思うのです。



さきにも申しましたが、プレップ法で簡潔に書こうとすると、情緒の表現が不足しがちになります。(その分速く書けますが)

だから、プレップ法でなにがしかのコツを掴んだら、これを自分の文の呼吸にしてしまわないように、ご留意くださいね。

文章の膨らませ方で模索していることについては、また今度、なんか書きます。


ではでは!!




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