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推敲の勘所②『いぬ・イヌ・犬』表記ブレを減らす努力目標ってなんのためよ 


ひとつの物語に名詞などの表記が、ひらがな・カタカナ・漢字等で混在していることを、表記ブレと呼んでいます。


例を挙げますと、『犬』『イヌ』『いぬ』の三種類。

極端な話をすると『わんこ』『わんわん』『イッヌ』も同等のものを指しており、

まあ稀有なケースですが、セリフや思考のところ(キャラクターの個性表現)以外で併用していれば、表記ブレの対象になるのかなと考えます。




小説を書き始めた当時、先輩に表記の混在を指摘されて『え、アカンのん?』とびっくりしました。

だって同じものを指しているのだから、間違いではないし……。

同人誌だからよくない?というのが本音でした。

もちろんです!同人誌だからOKですとも。


しかしそれを言い出すと、推敲の方法に行き詰っているひとの参考にはならないため、

ゆるゆるでもゆるされる前提は、ちょっと脇へ置いて、

最終的に、なぜ表記ブレを減らす努力目標を掲げているか、という回等に着地するよう、お話を進めたいと思います。




■表記ブレがあるとどんなことになる?


例文)河村さんがすし桶をおけ屋の北山に発注しました。

例文)河村さんがすし桶を桶屋の北山に発注しました。


超簡潔な文ですが、桶とおけの表記ブレによって、「え、どこになにを発注したって?」と一読で解しがたい字面になっています。

(桶という字はあまりなじみのない字なので、ひらいたほうがいいかもしれまんが、それはまた別の話ということで)





■単語の統一感が、誤読を防ぐ。

語彙の不足を気にされる方がいますが、名詞はなるべく固定するほうがよいと考えています。

ただしセリフはキャラクターの個性や、状態(酔っぱらっていたり泣いていたりバブっていたり)に寄りますので、

表記ブレがすべてNGという一辺倒な考え方は危険です。


バリエーションに幅を持たせるなら、動作(動詞)や比喩(形容詞)など、より深みを増す箇所に注力されることを推奨します。



■駆逐の工夫

①最初からだいたいの表記ルールを作っておく。

たとえば、人間以外の生物はカタカナ表記にする等のルールを作ります。

例を挙げれば、クマ・マグロ・カエル・シジュウカラなどです。

文章を作成するときにカタカナルールがあることを覚えていれば、

最初からブレを減らすことができます。


②単語登録を利用する。

 犬vs月輪熊の物語を書いていたとして、『人間以外の生物はカタカナ表記にする等のルール』を適用した場合、

 イヌvsツキノワグマが正解になります。頻出する単語はなるべく単語登録を活用し、打ち損じのないように工夫します。



③置換を活用する。

『いぬ・イヌ・犬』で表記ブレがあった際に、

犬といぬをイヌへ置換すると、表記ブレを修正できます。

置換機能はお使いのエディタによって変わるかと思います。

わからない場合は、『ご使用のエディタ名+置換方法』などで検索してみてくださいませ。



④置換の注意点

『鯨・クジラ・くじら』で表記ブレがあったとします。

それで置換を利用しますと『目くじら』に含まれる『くじら』を『クジラ』にしてしまうかもしれません。

ほかの単語を構成する可能性がある単語は、個別に検索し、変換していいかどうかを確認しつつ作業しましょう。



■直すかどうか迷ったら、どちらが読みやすいか、より滑らなのかを考える。

『まじでここまでする必要あるの?』と訊かれたら、べつにないと答えると思います。

推敲はおもてなしとおなじです。

泊まった旅館に、女性用の洗面用具等が置いてあるかどうかといった程度のことなので、

締め切り瀬戸際の方、どうかご無理なさらず。


ではなぜおもてなしをするのか。

それは自分の書いた話に没頭してもらいたいからです。


くつろぎながら読むぞと、ポテチの袋を裂いて、ベッドにゴロンして準備万端。

10ページまでは、ぱりぽり食べ、20ページごろには指を舐め、ティッシュで拭いて、

その後はポテチがそこにあることも忘れて、文をかっくらう。

読者がそんなふうであってくれたらと思うと、ゾクゾクしませんか。(変態)


わたしはビビりなので匿名フォームの利用はしておらず、

書いたものの感想を頂戴することはごくごくまれでございます。

それでもときどき、さっきのポテチの話のように、『没入して読みました』と

非常にありがたいお知らせをいただけることがあります。

そんなときは『グフッしめしめ』と汚い笑みを浮かべております。



快活な文であるとか、美しい文であるとか、ひとそれぞれに創作で目指すところが違いますよね。

私の場合、読者のアドレナリンをじゃばじゃばにすることが目標でございます。

夢中にさせるには、立ち止まらずにするすると読めることが最低条件ですので、

わかりやすい文にしようと、こころがけるようになり、

そして推敲に時間をかけるようになったというわけです。



もちろん素人ですので、完璧にはいきません。

よって表記ブレを含め推敲は、努力目標として掲げるくらいがちょうどいいのかなと思っています。

ア、このブログは、推敲らしい推敲を行っていないので、うちっぱなし、ドーンです。

つぎは副詞について考えたいなと思います。ではまた。




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